平成25年度 地域志向教育研究経費における活動紹介(1)

~旧警戒区域を中心とする歴史・文化遺産の総合的調査研究~

ふくしまの歴史・文化遺産を後世に伝えるために

行政政策学類(文化史担当)阿部浩一

旧警戒区域とその周辺地域を対象に、歴史資料を中心として、地域の歴史や文化を伝える文化財等の所在調査を進めるための基礎データを集成する。そのデータに基づき、地元自治体と連携して所蔵者への追跡調査を行う。さらに避難先での住民への聞き取り調査等によって、未だ把握されていない資料、あるいは地域にかかわる「記憶」「伝承」等を含め、総合的な歴史・文化遺産の確認と記録・保全につとめる。

歴史資料保全活動を支える行政政策学類考古学・文化史・地域史ゼミの教員と院生・学生

歴史資料保全活動を支える行政政策学類考古学・文化史・地域史ゼミの教員と院生・学生

震災後の歴史資料保全活動

1995年の阪神・淡路大震災以後、相次ぐ地震、集中豪雨などの大規模自然災害によって汚損・廃棄・消滅の危機にさらされた地域の歴史・文化遺産を救出し保全する活動が、全国各地で展開されている。その多くは地元の大学を中心に、博物館・文書館・美術館などの専門機関と地元自治体、郷土史研究会などによって構成されるネットワーク(史料ネット)の活動によって支えられている。
福島県でも2010年11月、㈶福島県文化振興事業団(当時)・福島県立博物館・福島県史学会と福島大学の四者が呼びかけ人となり、市民ボランティア組織である「ふくしま歴史資料保全ネットワーク」(略称:ふくしま史料ネット)が発足した。
東日本大震災後、福島大学は行政政策学類教員がふくしま史料ネットの代表・事務局をつとめ、関係諸機関と連携して、福島県内での歴史資料保全活動に取り組んできた。
旧警戒区域(2013年5月に再編)の博物館に残された文化財等については、2012年8月以降、国の被災文化財等救援委員会などの多大な支援を得て、福島県被災文化財等救援本部と地元の学芸員たちが救出活動に尽力している。福島大学の教員・学生も、旧警戒区域外の一時保管場所で文化財等の搬入・整理などの諸活動に参加している。

旧警戒区域内の博物館から救出した資料の一時保管場施設への搬入作業

旧警戒区域内の博物館から救出した資料の一時保管場施設への搬入作業

個人蔵の歴史・文化遺産を護るために

その一方で、個人・団体が所蔵する古文書や活動記録、古写真など、地域の歴史を語る多様な資料については、ともすればその所在すら把握されることなく、旧警戒区域内に残されたままになっている。かつて自治体史の編纂時に調査されたことがあったものでも、その後の所在追跡調査まで行われているものはそう多くない。
本調査研究では、旧警戒区域とその周辺地域を対象として、地域の歴史を語る資料の所在確認と追跡調査を当面の目標とする。その手がかりとして、現時点で所在が確認されている歴史資料と所蔵者を、自治体史等をもとにリスト化する。その後、地元市町村と連携し、その協力のもとに、所蔵者の避難先までアンケート等による追跡調査を行い、歴史資料の情報収集につとめる。持ち出し可能なものはデジタル撮影による記録保存につとめる。

自治体史をもとにしたリスト化作業

自治体史をもとにしたリスト化作業

地元での聞き取り調査

地元での聞き取り調査

さらに、避難先での所蔵者への聞き取り調査を進め、未だ所在の把握されていない歴史資料のさらなる洗い出しにつとめ、被災地域の歴史・文化遺産をできるだけ保全することを目標とする。あわせて、地域の歴史や地名、民俗文化等にまつわる「記憶」「伝承」の記録調査にもつとめたい。地域の歴史・文化遺産を“発見・再評価”し、新たな地域史の構築につなげていくことで、成果を地域住民に還元していくことも将来的な課題である。

地域住民にとって心の拠りどころとなる歴史・文化遺産

地域に残された歴史・文化遺産は、日常的にその存在や価値を意識するものではないかもしれない。しかし、それらは先祖以来、日々の生活を営んできた土地の記憶と強く結びついて伝存しており、住民が地域との結びつきの中でアイデンティティーを再確認し、町村外への避難の長期化によって分断された人々の心をつなぎとめ、将来的なコミュニティの再生をはかる上でも重要な役割をはたすものである。
政治や経済が衣食住など日常生活に直結し、かたちのある復興に寄与するものだとすれば、歴史や文化は住民どうし、住民と地域をつなぐ「心の復興」に寄与するものである。「心の復興」があってこそ、真の意味での地域再生が実現することを確信し、本調査研究の進展につとめていきたい。

県内外での歴史資料保全活動(左からいわき市、米沢市、国見町)

県内外での歴史資料保全活動(左からいわき市、米沢市、国見町)

Page Top