<教育><社会貢献>【ふくしま未来学入門】第9回地域におけるミュージアムの役割とアートの意義(12/15)

第9回の「ふくしま未来学入門」の講師は、福島県立博物館学芸員 川延安直氏、美術家/映画監督 藤井 光氏でした。

まずはじめに、福島県立博物館 学芸員の川延安直さんのお話を伺いました。

震災前から博物館として、来館者をただ待つだけではなく、博物館に貯まった情報のストックを博物館のみで使うのではなく、博物館の外に出ていき役立てることができないかと考えてきたそうです。博物館は、古いモノを扱っていますが、古いモノは、新しいものを生み出すために必要なモノ「先人からの贈り物」と捉え、それに対して自分たちが「未来に役に立つ贈り物」をしたいと考えました。そして、その先に目指したものは、博物館を「創造(クリエーション)」の場・仕組みにすることです。

 そこで、2010年からアートプロジェクトを始めることにしましたが、震災が起き計画は変更をせざるを得なくなりました。しかし、そのプロジェクトをきっかけに全国から福島に寄せられた作品やワークショップ開催などの受け皿となっていきました。

震災後のアートプロジェクトは、被災地への思い・エールを届けたいと言う人の想いを届けることを目的にはじまり、その後、「心のケア」から「地域文化の振興」へと段階を経て、「福島の現状を県外に発信する」ところまできました。そして、福島も「伝える」ことから「考える」という段階へ。
そのために、「教訓を残す」「負の歴史を伝える」「先進館に学ぶ」「被害を軽減するための知恵・情報を共有する」ということが博物館としてできること・やるべきこととして、取り組んでいるそうです。
震災や原発事故は福島だから起きたわけではありません。そのため、福島の状況を一般化・普遍化・抽象化し伝え、「考える」きっかけを作る博物館の取り組みの重要さを感じることができました。

本日、もう一人のゲストは美術家/映像作家の藤井光さんです。
藤井さんが2013年に製作した映画「『ASAHIZA』 人間は、どこへ行く」や「プロジェクトFUKUSHIMA!」は、国内外で上映されてきました。

藤井さんは、「歴史、過去を語るということが新たな状況を作り出す」と話されていました。当時の想いに戻り、過去を語ることで、語り手は同時にその記憶を再編集していることになり、それによって語り手の今現在が変化していくのだそうです。

過去が刻印された文化財などから、その過去を今後、私たちの社会をどう変化させていくものに変わりえるものになるか、かつての過去から、今日現在をいかに活力あるものにするのかという、視点がとても印象に残り、「歴史を回帰させること」「過去を語ること」は単純に過去を知る以上の意味があるのだと気づかされました。

藤井さんの「芸術というものの役割は、普通にすごしていては見落としてしまう不可視なものを可視化することだ」という言葉からも、芸術・アートと呼ばれるものには、私たちが認識している以上の力と役割があるのだということを感じました。学生からも、「藤井さんが、福島で起きていることを芸術、哲学的視点でとらえることで、そこのコミュニティだけの問題として終わらせず、一人一人に共通するものなのだと提起していくことに感銘を受けた」などの声がきかれました。

最後に藤井さんから、福島にある問題は日本全国が抱えるものであり、そういう視点で伝えていくこと。また、この原発事故によって避難を余儀なくされた地域でレスキューされた文化財も、いずれ広島平和記念館の資料や海外の博物館機関だけでなく関心がある人々と連携・協働しながら志向していく「ネットワーク」を作り出し得るものになり、そうしたネットワークの中で考えていくことが重要であると語られました。
こうした地域にある文化財、遺構、歴史、経験などが、これからの私たちの未来にどうつながり、社会をどう変化させていくものになっていくのか、とても関心を持ちました。

お二人の話をとおし、受講生からは、「2人の話から『歴史』というワードが良く出てきたが、過去から何を学ぶのか、何を伝えるかが大切だと思った」「福島の歴史が未来へつながってほしい」と言った声が多く聞かれました。
川延さん、藤井さん、貴重なお話をありがとうございました。

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福島県立博物館
http://www.general-museum.fks.ed.jp/

はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト
http://hamanakaaizu.jp/

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開講して3年目となる「ふくしま未来学入門」は、学類・学年を問わず受講できる科目で、地域課題の解決をめざし行動する個人や企業などを講師としてお迎えし、その実践的な取り組みや経験について学びます。また、震災と復興における社会問題や諸現象に対し、学問領域の枠組みを超えて多角的・総合的に考える能力を養うことをめざしています。
「他県や外国の方に今の福島のことを聞かれた際にしっかりと現状を伝えられるようになりたい」「大学4年間で自分がどのように福島に関わっていくかを見いだしたい」など、福島のことを知り何かしたいという動機から、250名を超える学類生や留学生、公開授業に申し込みいただいた35名の方が受講しています。

平成29ふくしま未来学入門授業スケジュール http://coc.net.fukushima-u.ac.jp/?p=1903

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