<教育><社会貢献>【ふくしま未来学入門】第5回 放射能と健康被害:分からないという方法(11/17)

第5回の「ふくしま未来学入門」の講師は、相馬中央病院 内科医 越智小枝 氏でした。

東京の病院で働く中で公衆衛生に関心を持った越智先生は、公衆衛生を学ぶためロンドンへ留学することを決意。留学が決まった矢先に、東日本大震災が起きました。2011年10月からロンドンの公衆衛生大学院で学び、その後、相馬市で仮設診療などを手伝い、2013年から相馬中央病院に勤務しています。

震災後の福島で診療を続ける中で、人々の健康が損なわれていた理由は決して放射能だけでなく、それ以外で健康が損なわれているにも関わらず、そこが見落とされていると感じたそうです。

震災後の福島では放射能による健康被害を大きく取り上げられてきました。一方で、原発事故によって起きた健康被害は放射能被害よりもはるかに大きく、その多くは現在進行形で、それは福島以外にも共通する課題となっています。
しかし、現在は、放射能とガンのことばかり注目し話すことによって大量の健康被害が見落とされており、風評被害も収まらないという状況があります。

平成24年3月までの災害関連死のうち、95%が60歳以上、そして7割近くに既往症があったのだそうです。

糖尿病や高血圧などでなければ脳卒中や心筋梗塞にならなかったかもしれない。
普段から運動をする習慣があれば運動不足にならないかもしれないし、寝たきりにならないかもしれない。
寝たきりの人が少なければ、避難時の健康被害も少なくなる・・・

そこから学んだことは、災害前の平時に「まち全体が健康であること」それが何よりの災害対策であり、町ぐるみの健康促進は「未来の災害対策」「平時には健康な地域社会」をつくることになるということ。そして、それは世界でも共通なのだと知りました。

また、「歴史」は事象が起きたときではなく、それを語り継ぐ人によって作られていくということを聞いて、私たちはどんな歴史をつくっていきたいのかを考え行動していくかで、10年後、20年後に「ふくしま」という歴史がどういうものとして語り継がれているのかにつながるのだと実感し、今まさに私たちは歴史をつくっているのだと感じました。

学生からは、「原発事故と聞くと一番に思い浮かぶの放射線についてだったが、人々がどのような健康被害で苦しんでいるのか知らず、深く考えさせられたとともに、災害についての新しい解釈の仕方を提示してもらった」「健康とは?災害とは?震災が起きたときからニュースで聞いてきた言葉の根本的な意味を問う話で、 違った角度から話が聞けておもしろかった」「『何をすべきか』ではなく、『自分に何ができるか』と考えて、自分から行動することを大切にしたい」など、先生の話から新しい視点を得、自分の行動に結びつけたいという声が多く聞かれました。

 

「継続的に福島のことを考えていくためには『どんなことが分かっていないのか』を発見し、ふくしまに対して問いをたてつづけることが、復興につながるヒント」
「なぜふくしまを学ばなければいけないのだろうかを考え、自分で『問い』をたてられるようになろう。それは次に何か災害が起きたときに大切になるから」

越智先生の言葉のひとつひとつに未来を担う学生へのメッセージと強い想いを感じ、「自分で問いを立て続けること」「考え続けること」その意味を深く理解した時間でした。

越智先生、貴重なお話をありがとうございました。

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開講して3年目となる「ふくしま未来学入門」は、学類・学年を問わず受講できる科目で、地域課題の解決をめざし行動する個人や企業などを講師としてお迎えし、その実践的な取り組みや経験について学びます。また、震災と復興における社会問題や諸現象に対し、学問領域の枠組みを超えて多角的・総合的に考える能力を養うことをめざしています。
「他県や外国の方に今の福島のことを聞かれた際にしっかりと現状を伝えられるようになりたい」「大学4年間で自分がどのように福島に関わっていくかを見いだしたい」など、福島のことを知り何かしたいという動機から、250名を超える学類生や留学生、公開授業に申し込みいただいた35名の方が受講しています。

平成29ふくしま未来学入門授業スケジュール http://coc.net.fukushima-u.ac.jp/?p=1903

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