<教育><社会貢献>【ふくしま未来学入門】第6回 原子力災害の社会的影響~風評問題のメカニズムとその対策を中心に(11/24)

第6回の「ふくしま未来学入門」の講師は、東京大学 特任准教授 関谷 直也氏でした。

 

関谷先生は、「風評被害」を研究する日本でただひとりの研究者です。

「風評被害」は、
安全が関わる社会問題が報道され、
本来『安全』とされるもの(食品・商品・土地・企業)を人々が危険視し、
・消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的損失
のことを言います。
「風評被害」はうわさによる被害とされてしまいがちですが、それらは分けて捉え、「安全」であるのに「生活ができない」・「事業者の制限がかかる」という経済的被害が「風評被害」であり、「経済的復興」をめざしていくことが目的であることを改めて、整理し、認識することができました。

 

また、原子力災害は東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故の前にも存在し、第五福龍丸被爆事件やJOC臨海事故などにおいても「風評被害」がありました。そうした歴史から、原子力災害の社会的影響と東日本大震災の風評被害の特徴を理解することの重要性にも気づかされました。
そして、関谷先生は、震災直後の風評被害と“今”の風評被害の違いを正しく認識し、さらには「風評被害」の段階論として福島県の産物に対して消費者や流通業者がどのように思っているのか、その段階を正しく見極めて対策を行っていく必要があることを強調しました。

 

最大の問題は、
「知らない」ことが風評被害に一番つながってしまう
ということだと関谷先生は強く言います。
福島県ではお米の全量全袋検査が行われていること、NDであることが、東日本大震災及び原発事故から日が経てば経つほど、その事実について「知らない」人が増えています。検査結果や検査態勢、検査後の出荷のしくみ、また福島県の農家の方々などの努力の上で「安全」になっているという「事実」を伝えることを続けたうえで、イメージ戦略やブランド戦略をする必要があり、今はイメージ戦略が先行しアンバランスになっていると指摘しました。6年目の風評被害の課題は、科学(リスク・コミュニケーション)やイメージ(おいしさ)だけではなく「事実」を伝えること。「事実」を正しく理解し、それを身近な人から伝えてくことが、福島県に住んでいる私たちひとりひとりの責任でもあることを痛感しました。

学生からは、
「風評被害について「ありもしない負の面をでっちあげられる」という漠然としたイメージしか持っていなかったが、水爆・臨界事故などでも同様にあり、その歴史を知ることで、簡単に説明できない問題であると実感した」、「県外、全国の人には福島のものが安全だと伝わっていない、知らないという事実があることを福島に住む私たちも知っておかなければならないと思った」、「風評被害を収めるために、しっかりと根拠を示して、多くの人に知ってもらえるようにしてはいけないため、自分も根拠を理解したいと思った」、「『代替品でいい』ではなく、『福島県産がいい』と思われるようなイメージ形成のために、自分にもできることを探していきたいと思った」
という声が聞かれました。歴史から見た今の風評被害の特徴と複雑性、そして、消費者の心理を解き明かすことで見えた風評被害の実態を知り、これから自分たちがすべきことが明確になった時間でした。

関谷先生、貴重なお話をありがとうございました。

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開講して3年目となる「ふくしま未来学入門」は、学類・学年を問わず受講できる科目で、地域課題の解決をめざし行動する個人や企業などを講師としてお迎えし、その実践的な取り組みや経験について学びます。また、震災と復興における社会問題や諸現象に対し、学問領域の枠組みを超えて多角的・総合的に考える能力を養うことをめざしています。
「他県や外国の方に今の福島のことを聞かれた際にしっかりと現状を伝えられるようになりたい」「大学4年間で自分がどのように福島に関わっていくかを見いだしたい」など、福島のことを知り何かしたいという動機から、250名を超える学類生や留学生、公開授業に申し込みいただいた35名の方が受講しています。

平成29ふくしま未来学入門授業スケジュール http://coc.net.fukushima-u.ac.jp/?p=1903

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