地域志向教育研究

平成25年度 地域志向教育研究経費における活動紹介(2)

~福島の子ども外遊び支援の実施~

『コドモイナGO』活動概要

経済経営学類 遠藤 明子
※福島の子ども外遊び支援「コドモイナGO」を実施しています♪

https://www.facebook.com/codomo175

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本活動は、福島第一原子力発電所事故によって外遊びがままならない福島(主に中通り)の子どもたちを、福島県内ながら放射線量が低く自然豊かな南会津町でのキャンプに招待し、地域資源を活用した外遊び支援に取り組むものである。
原発被災地域の子どもたちのために何かをしたい。そうした思いから、平成24年より本学を拠点に、南会津町、地元NPO、企業等が共働し合い、保養プログラムを立ち上げるに至った。
自然体験は子どもの成長において、身体のみならず、心の休息や感受性、コミュニケーション能力の発達に密接に関わっている。こうしたことから本活動は、子どもの心身両面でのサポートを目指している。
また、本活動は上記の様な支援のみならず、「子どもの保養」を目的とした様々な機関の連携により、ソーシャルビジネスの調査研究を担い、点在する福島県内の地域資源を有機的に活用し、復興に向けた地域ニーズをマッチングさせる効果が期待できる。さらに、学生にとっても、現地でボランティアスタッフとして事前準備から地域関係者と密に関わり、肌で感じながら地域振興・社会貢献活動の実践的な学びが可能となり、ひいては、東北の復興を支える担い手としての成長にも繋がっていく。

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今までの活動内容

平成23(2011)年3月に発生した福島第一原子力発電所事故の影響によって、福島県の中通り地方の多くの地域において、子どもたちの外遊びがままならなくなっている。本活動は、そうした子どもたち(小学校高学年)を対象に、同じ福島県内ながら空間放射線量が事故前と殆ど変わらず、自然豊かな南会津町伊南地域(旧伊南村)に招待し、県内の地域資源を活用した外遊び支援を行うものである。
事故当初からしばらくは、国や地方自治体、教育委員会などの行政組織の方針として、福島県の該当地域の学校や公園等において子どもの屋外活動が1日1時間に制限されるといった措置が取られたが、除染と放射性崩壊により空間放射線量の低減が進んだ現在、殆どの地域でこうした行政主導の外遊び制限は解除されてきている。
しかし一方で、平成25(2013)年1月の段階に入っても、福島県中通り地方の子育て世帯では、子どもに外遊びを「させない」という回答が約30%にのぼっている(福島大学「子供の心のストレスアセスメントチーム」調べ)。同調査によると、他県(秋田県、兵庫県、福井県)では子どもに外遊びを「させない」という回答がいずれも1%に満たず、85%以上の回答が日常的に外遊びを「させる」で占められている。このことから、福島県の中通り地方では子どもの外遊びについて、依然として異常事態が続いていることがわかる。
ストレス反応の高まりや肥満の増加など、外遊び減少によって子どもの心身の発達への影響が懸念されており、外遊びの社会的支援は福島県中通り地方において急務となっている。

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こうした背景から、平成24(2012)年より経済経営学類遠藤明子研究室では学生とともに、地方自治体(南会津町)、地元自治組織(いな夢クラブ)、自然体験活動専門家(野外学校FOS)、企業(コールマンジャパン株式会社)と協同し、南会津町での外遊びとキャンプ体験を提供する、保養プログラムを立ち上げるに至った。
本プログラムは子どもたちに地元・福島県での自然体験活動を通じて心身のリフレッシュメントを提供するとともに、保護者だけでは実施の難しい専門的なプログラムを極めて安価に提供することで、保護者の経済的・心理的サポートをも効果として狙っている。
また、本活動は上述のような直接的な支援のみならず、「子どもの保養」を目的とした様々な機関の連携により、ソーシャルビジネスの調査研究を担うとともに、点在する福島県内の地域資源を有機的に活用し、復興に向けて地域ニーズをマッチングさせる役割も目指している。さらに、学生にとっても、ボランティアスタッフとして地域の人々と密に関わることで、地域振興・社会貢献活動の実践的な学びが可能となっており、ひいては、東北の復興を支える担い手としての成長にも繋がると期待される。

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今後の活動予定

今後も継続的に、関係団体(南会津町、いな夢クラブ、野外学校FOS、コールマンジャパン株式会社等)と連携し、福島の子どもたちを対象とした外遊び支援を行う計画である。平成26(2014)年度については既に8月上旬のキャンプ実施が決定している。遠藤研究室としてはそれに向けて、広報活動を中心に4月から展開する予定である。

地域志向教育研究経費での活動において、期待すること等

フィールドスタディを希望する学生は多いが、費用の面で実施を諦めざるをえないことがある。最も負担が大きいのは交通費の負担である。むろん現行でも借り上げバス代の支出は認められているが、行き先(例えば東京)によっては、バスを借り上げるよりも高速バスサービスを利用したほうがはるかに安上がりで済むことがある。そこで地域志向教育研究経費には、こうした柔軟な使途も認めてもらえることを期待したい。

平成25年度 地域志向教育研究経費における活動紹介(1)

~旧警戒区域を中心とする歴史・文化遺産の総合的調査研究~

ふくしまの歴史・文化遺産を後世に伝えるために

行政政策学類(文化史担当)阿部浩一

旧警戒区域とその周辺地域を対象に、歴史資料を中心として、地域の歴史や文化を伝える文化財等の所在調査を進めるための基礎データを集成する。そのデータに基づき、地元自治体と連携して所蔵者への追跡調査を行う。さらに避難先での住民への聞き取り調査等によって、未だ把握されていない資料、あるいは地域にかかわる「記憶」「伝承」等を含め、総合的な歴史・文化遺産の確認と記録・保全につとめる。

歴史資料保全活動を支える行政政策学類考古学・文化史・地域史ゼミの教員と院生・学生

歴史資料保全活動を支える行政政策学類考古学・文化史・地域史ゼミの教員と院生・学生

震災後の歴史資料保全活動

1995年の阪神・淡路大震災以後、相次ぐ地震、集中豪雨などの大規模自然災害によって汚損・廃棄・消滅の危機にさらされた地域の歴史・文化遺産を救出し保全する活動が、全国各地で展開されている。その多くは地元の大学を中心に、博物館・文書館・美術館などの専門機関と地元自治体、郷土史研究会などによって構成されるネットワーク(史料ネット)の活動によって支えられている。
福島県でも2010年11月、㈶福島県文化振興事業団(当時)・福島県立博物館・福島県史学会と福島大学の四者が呼びかけ人となり、市民ボランティア組織である「ふくしま歴史資料保全ネットワーク」(略称:ふくしま史料ネット)が発足した。
東日本大震災後、福島大学は行政政策学類教員がふくしま史料ネットの代表・事務局をつとめ、関係諸機関と連携して、福島県内での歴史資料保全活動に取り組んできた。
旧警戒区域(2013年5月に再編)の博物館に残された文化財等については、2012年8月以降、国の被災文化財等救援委員会などの多大な支援を得て、福島県被災文化財等救援本部と地元の学芸員たちが救出活動に尽力している。福島大学の教員・学生も、旧警戒区域外の一時保管場所で文化財等の搬入・整理などの諸活動に参加している。

旧警戒区域内の博物館から救出した資料の一時保管場施設への搬入作業

旧警戒区域内の博物館から救出した資料の一時保管場施設への搬入作業

個人蔵の歴史・文化遺産を護るために

その一方で、個人・団体が所蔵する古文書や活動記録、古写真など、地域の歴史を語る多様な資料については、ともすればその所在すら把握されることなく、旧警戒区域内に残されたままになっている。かつて自治体史の編纂時に調査されたことがあったものでも、その後の所在追跡調査まで行われているものはそう多くない。
本調査研究では、旧警戒区域とその周辺地域を対象として、地域の歴史を語る資料の所在確認と追跡調査を当面の目標とする。その手がかりとして、現時点で所在が確認されている歴史資料と所蔵者を、自治体史等をもとにリスト化する。その後、地元市町村と連携し、その協力のもとに、所蔵者の避難先までアンケート等による追跡調査を行い、歴史資料の情報収集につとめる。持ち出し可能なものはデジタル撮影による記録保存につとめる。

自治体史をもとにしたリスト化作業

自治体史をもとにしたリスト化作業

地元での聞き取り調査

地元での聞き取り調査

さらに、避難先での所蔵者への聞き取り調査を進め、未だ所在の把握されていない歴史資料のさらなる洗い出しにつとめ、被災地域の歴史・文化遺産をできるだけ保全することを目標とする。あわせて、地域の歴史や地名、民俗文化等にまつわる「記憶」「伝承」の記録調査にもつとめたい。地域の歴史・文化遺産を“発見・再評価”し、新たな地域史の構築につなげていくことで、成果を地域住民に還元していくことも将来的な課題である。

地域住民にとって心の拠りどころとなる歴史・文化遺産

地域に残された歴史・文化遺産は、日常的にその存在や価値を意識するものではないかもしれない。しかし、それらは先祖以来、日々の生活を営んできた土地の記憶と強く結びついて伝存しており、住民が地域との結びつきの中でアイデンティティーを再確認し、町村外への避難の長期化によって分断された人々の心をつなぎとめ、将来的なコミュニティの再生をはかる上でも重要な役割をはたすものである。
政治や経済が衣食住など日常生活に直結し、かたちのある復興に寄与するものだとすれば、歴史や文化は住民どうし、住民と地域をつなぐ「心の復興」に寄与するものである。「心の復興」があってこそ、真の意味での地域再生が実現することを確信し、本調査研究の進展につとめていきたい。

県内外での歴史資料保全活動(左からいわき市、米沢市、国見町)

県内外での歴史資料保全活動(左からいわき市、米沢市、国見町)

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